10月は「神在月」…豊かな文化が薫る出雲の広報紙
東京では、雨の日がずっと続いています。何週間も太陽を見ることがないと、季節感もなくなるもので…。暦を見て、気づけばもうすぐ10月。ああ、もう夏は終わり、秋だったのかと、雨のまま過ぎ行く季節を惜しんでいます。
ところで、10月といえば「神無月」。八百万の神々が出雲に集まるため、全国から神様がいなくなる月…と言われています。でも、逆に神様が集まる出雲にとっては「神在月」。島根県出雲市の『広報いずも 2016年10月号』には、そんな「神在月」にたくさんの神様をお迎えして執りおこなわれる「神在祭」について、書かれていました。
私は知らなかったのですが、全国の八百万の神々が出雲に参集された際、直接出雲大社に向かわれるのではなく、まず同じ出雲市内にある朝山神社に立ち寄られるのですね。ですから、最初の「神在祭」は、朝山神社で10月31日(月)~11月9日(水)に執りおこなわれると書かれていました。一般に私たちは10月を神無月といっていますが、本来は旧暦の10月。ですからこの朝山神社の「神在祭」の日程は、旧暦で10月1日~10日…ということになります。
そして、出雲に参集した神々が、全国に旅立たれる前には、斐川町の万九千神社に集結されます。そして直会という宴を催した後、再会を期して全国への帰路につかれるのだとか。この万九千神社の「神等去出(からさで)祭」は、11月25日(金)で、旧暦の10月26日にあたります。
若いころは、私は、こうした伝承に無頓着でした。しかし、仕事で各地を訪れると、その地その地に言い伝えがあり、それが今の時代にもどこかで生きていて、日本の文化の豊かさ、奥行きの深さを感じるようになりました。また、4年後には東京でオリンピックも開催されます。さりげなくこうした豊かな日本の文化の話を、外国からのお客様にもしてみたいなとも思います。
広報紙は、地域密着型の媒体ですから、行事の告知のようなものの中にも、知らず知らずのうちに、その土地の歴史や伝承が内包されています。そしてそれは、日本各地の豊かな文化を支える役目も担っているように思えます。東京で、これからの情報を伝える各地の広報紙の情報に触れる中で、今と同時に古を感じ、教養をも深めたいと思う、秋の夜長なのでした。