「税源偏在是正議論についての特別区の主張について」
平成26年度税制改正で、国は自治体の財源である企業等の住民税(法人住民税)の一部を国税として、地方の自治体間で分配する改正を行いました。また、平成31年10月(消費税率10%段階)には、法人住民税の国税化をさらに進めるとしています。これは都市と地方の税収格差を是正するためのものですが、国税比率を高めることは、歳出が多い地方の自主財源をますます減少させることを意味しています。これは、限られた地方財源の中で相互に調整しているにすぎません。このような国の税制度改正の方向性に対して、特別区(東京23区)をはじめとして都市部の自治体が様々な反論を行っています。
今回は、税制改正に関する記事のなかから東京都港区「広報みなと」2016年10月11日号の“税源偏在是正議論についての特別区の主張について”を取りあげます。この記事では、国が進める税源偏在是正の議論が、“受益と負担に基づく応益課税”という地方税の根本原則から完全に逸脱するとして、以下のような主張を掲載しています。
・税源偏在の是正は従来の国税による地方交付税の財政調整機能により行われるべきです。
・ふるさと納税は本来の趣旨に立ち返って考えるべきです。
・代替財源なき法人実効税率の引下げは、将来に深刻な影響を及ぼします。
・特別区は大都市特有の膨大な行政需要を抱えています。
・特別区は全国各地域との更なる連携により共存共栄をめざします。
税源偏在是正議論は税制度という難しい問題であり、多くの人は関心を持たないかもしれませんが、自治体が直面する問題を広報紙にきちんと掲載することは意義のあることだと思います。
「ふるさと納税制度」により、特別区全体の税収が100億円以上減少したそうです。さらなる偏在是正による減収は、特別区の住民サービスの低下を招くことになるかもしれません。“税に関する受益と負担”の議論は様々ですが、よりオープンな形で議論を深めていってほしいものです。