私たちが心を動かされるのは「情報」?“美術鑑賞まるわかり”で絵が見たくなるワケ
芸術の秋ですね。そこで今回は、兵庫県神戸市の『広報紙KOBE 2016年(平成28年) 11月号』に注目してみました。この号の巻頭特集は「あなたはどう見る!? 美術鑑賞まるわかり」。なんでも「誰でも美術鑑賞をもっと楽しめる秘訣」があるのだとか。
実は我が家は徒歩圏内に美術館がいくつもあるので、ときどきお散歩がてら夫に連れられて行ってみたりしています。が、そもそも絵心のない私。名画を前に、なんとも心もとない…というか、居心地の悪いような気持ちをぬぐいされずにいます。
社会教育調査(平成27年度中間報告)によると、平成26年度に美術館を訪れた人は約3066万人。計算上は、国民のおよそ4人に1人は訪れていることになります。しかし、何度も同じ人が行っていたり、私の様になんとなく連れて来られたリ…で、本当に美術鑑賞を楽しんでいる人は、その実、もっともっとずっと少ないのではないかと思ってしまいます。
そこで、食い入るように、「美術鑑賞まるわかり」特集を読んでみました。神戸市の小磯記念美術館などの学芸員の方々が、鑑賞のヒントを教えてくれています。例えば、「作品を“思うまま”に見ることで、自分自身の心情が分かる」、そして「繰り返し同じ作品を鑑賞していると、そのときの環境や心情によって違った見え方になる」のだとも。ふむふむ、同じ小説でも読むたびに、感じ方や理解の仕方が違うのと同じなのかな…。ちょっとわかってきた気がしました。
中でも、私が大いに気になったのは、鑑賞するとき、作品ばかりではなく“額縁”も見てほしいという学芸員の方の言葉。これらも作品に合わせて、色味や装飾を考えたり、作家自身が手掛けていたりと、額縁も立派な作品のひとつなのだそう。このヒントを読んだとき、私の中に、絵と額縁のコラボレーションを見てみたい…という気持ちがむくむくとわいてきました。
広報誌には、いつも美術館がどこにあって、いつ、何を展示しているか…などの「情報」が載っています。でも私のような素人が、それを見て、足を運ぼうと思い立ち、実際に行き、そして見て、楽しむ…そこまでたどり着くのには、いくつものハードルがあります。「情報」には、そのいくつものハードルを越えさせる力は、残念ながらありません。広報紙は、やはり「情報」だけ伝えればいいというものではないのですね。そこに「啓発」が加わることで初めて、「情報」に力が出てきます。私も学芸員の方々に啓発されて、ハードルを越えられそうな気持ちになってきました。来週にでも夫を誘って、近所の美術館を訪ねてみようと思います。